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 広島大学大学院人間社会科学研究科 准教授

 Interview

研究室を決めかねている某学部生が研究室訪問でインタビューしたことをせっかくなのでまとめてみました!

Q.どんな研究をしているんですか?

 私がメインでずーっとやっていて軸になっているのは「睡眠中の夢の発生メカニズム」ですね。夢とかがいい例だと思うんだけど、“みんなが経験しているんだけど、実際それどうなってるの!?”みたいなものを解明したいんですよね。その興味の対象は夢だったりだとか、不思議な意識体験だったりだとか、視覚感覚だったりだとか、なんだかよく分からないものを可視化して目に見える形にしたい。そして、それを世の中に活用してもらいたい。そう考えています。

 もう少しだけ詳しく説明しますね。夢の研究だと、そもそも夢って何ですかね?夢ってどうやったら調べられるんでしょう。夢について詳しく理解しようとすると、寝ている時だけでなく、起きている時の視覚のメカニズムを調べてそれと眠っている時の視覚のメカニズムを比較することも重要なんですね。

 まず、寝ている時。レム睡眠中の生理指標を測定しているんですね。レム睡眠中の生理指標というのは、レム睡眠中の“急速眼球運動”“脳波”“筋電図”“心拍”とかのことですね。それらを測定します。

 次に、起きている時。何かモノを見て脳が処理する過程の解明では、眼球運動に応じて生じる脳内の視覚情報処理を反映する脳波(λ反応)っていうのを調べたりしています。それを調べることによって、「この刺激の時には、ここの(脳の)部分を使ってこれくらいの強さで処理をしている、こういう刺激の時には、脳はあっちの部分を使ってこれくらいの強さで処理をしている」ということが分かるんですね。あくまで一端でしかないですが、これがやっている脳の研究、脳のメカニズムの解明の一部です。

Q.そもそもどういった経緯でこの研究を?

 私が大学生だった頃の話からすると、3年生の頃に講義で夢のことを扱っていて、その時に、「夢のメカニズムって謎だらけじゃん!これを解明出来たら凄く面白い!」って思ったのがきっかけです。それで卒論で「起きている時の視覚、脳のメカニズム」について研究して、「睡眠中の視覚情報処理」を修論で。博論で実際に夢の聴取をやって、夢の内容とレム睡眠中の生理活動と起きている時の生理活動を比較して、「夢ってこういうメカニズムで発生しているんじゃない?」ということを考え、既存に理論があったものに生理データをちゃんと取って整合性を確かめるっていうことをしました。

 こういう分野ってかなりニッチなことをしているんだけど、独自性があって、更に一生かかっても解明できるかどうか分からないっていう巨大なテーマに出会えたことは、凄く嬉しいことだと思っています。

 ただ、最初はメカニズムを解明したい!知りたい!という知的好奇心だけでやってきていたんだけど、研究室を持つ経験を5年間くらい経て、「所属する学生たちや世の中に何が還元できるだろうか」と考えた時にやっぱり世の中に活かせることを考えていかないと思いました。世の中に貢献しているという実感を持てるものでなければ、まず学生さんたちが楽しくないだろうと。

Q.今の研究での課題や喜びは?

 学生さんについての課題とかの話をすると、研究していくに当たって1.5年しか持ち時間がないっていう状況の中で、実験が生理指標とかのデータを地道にとっていくものなので、まあ当たり前と言えば当たり前なんですが、なかなか結果を出すことが難しいですよね。その中でどうやっていくのかっていうことを一緒に考えていっていますね。

 研究についても課題は基本的には一緒で、端的に言うと「地味」ってことですね(笑)やっている内容がデータを地道に取っていくという作業が必要不可欠なので、そういった地道な作業をしっかり行っていく根気強さみたいなものは必要になってきます。でもそれは表裏一体で、データを取るということは確実に何かが見えるということでもあるわけです。説得性をもって皆に納得してもらう為には、「目に見える」という要素は必須です。自分もデータを見て納得できる。ここの課題や喜びはやっぱり表裏一体ですね。

 また、先述の通り、やっている研究はそこそこニッチなことなんですが、「他とは違うことをやれている」と思っているし、「他とは違うことをやっていこう」ということを常に考えています。よく思うのがナンバーワンよりオンリーワンということで、”ナンバーワン”を目指しているといつか限界が来てしまうのだけれど、”オンリーワン”を目指していると、新しいことを解明していけるし、振り返ったときに自ずとそ分野で”ナンバーワン”になっている、という考えがあります。

Q.なぜこの研究が必要なのでしょうか?

 簡潔に言えば、人に「“夢”をあたえることが出来るから」っていうことですね。ただ知的好奇心のためだけに研究することもありだし、大学での研究のような「よく分かんないことを本気でやっている人がおるんだ!」っていうことがあってもいいじゃないか、と思っているんですね。

 同期で就職した子たちも、「私も院にいけるなら行きたい」ということを言っていたのを覚えていて、その時その時で自分たちは色々なことを鑑みて人生の選択をしているんだけど、その時に就職を選びたいなって思えなかったことは今になって凄くラッキーなことだったと思います。院に行けたことも運が良かったし、こういったテーマを見つけられたことも運が良かったし、こうして研究室を持って働けていることも本当に運が良いなと思います。同じように研究が大好きだった先輩や同期の分も、この”よく分かんないこと”を本気でやりたいと思っていますね。

Q.研究室の学生はどんなことをしているのでしょうか?

今、小川研に所属しているある学生でやっているのは、例えば「デジャヴの研究」とか「対人関係に関する脳波の研究」「刺激処理に関する眼球運動」とか。

 ここに所属しているみんなは、”心とか体に関する何らかの仕組み”を知りたいっていうところは共通して持っていましたね。でもやっぱり最初は漠然としているので、特別研究を行うステップとして、まず私は最初に「生い立ち」とかを聞いたりします(笑)「家族構成」とか(笑)「何に対していつも考えているのか」とかですね。実はけっこうその問いは重要で、研究は人となりが重要なので「何が楽しいのか」ということとかと私が持っているアセット(研究内容や協力できること)を組み合わせて研究内容を決めていきますね。

まあ、最初から研究内容を決めておかなければならないわけではないので、話ながら自分が興味があることを軸に決めていければいいかなと思います。特にやっている内容が質問紙とかではなく、脳波の測定と解析なので自分の信念に近いことをやっていくことがとても重要です。

Q.小川研はこれからどうなっていくのでしょうか?

 研究内容が還元された方がいいので多くの人により研究内容をもっと広めていきたいし、研究室に所属してくれている学生にもっと価値ある経験を与えてあげたい、と思っています。そのためには、もっともっと成果をあげて注目される研究室にしていく必要はあると思います。それに限らず、学生が「この研究室に来てよかった!」と胸を張って言える場所にする為のことは何でもやっていきたい。

 それには、論文をしっかり出しシンポジウムに出るだとか、学生をコンスタントにしっかり論文を書けるようにサポートする、学生が自分が望む就職先や道に進めるように適切に導くことをきっちりやっていきます。

[ 編集後記 ]

お話を伺って強烈に感じたのは学生に価値あるものを与えてあげたい、という小川先生の想いでした。「研究は“人となり”」っていう言葉も勉強になると同時に心に刺さりました!お忙しい中お話ありがとうございました!

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